アクセス
福岡城は政令指定都市福岡の市街地に位置しておりアクセスに悩むことはありません。最寄り駅は水堀に沿って走る福岡市地下鉄空港線の赤坂駅、あるいは大堀公園駅となります。赤坂駅からは徒歩5分で上之橋御門跡、大堀公園駅からは徒歩5分で下之橋御門に至りますが、上之橋御門跡から城内に入るルートがかつての大手筋となります。
感想
これまで福岡に行ったことは何度かあるのですが福岡城は初登城です。福岡には有名観光地が多く城下町というイメージはあまりありませんが、さすがは筑前52万石の居城、驚くほど立派な織豊系城郭です。
慶長真っ只中の築城ラッシュ機に秀吉子飼いの黒田長政によって築かれたということで、曲輪割は徳川系城郭よりも細かく、天守台周辺の入り組んだ造り、折れを多用した石垣や虎口は
熊本城を彷彿とさせます。加藤清正は「自分の城より優れている」と福岡城を絶賛したと言われていますがそれも納得です。とはいえ、熊本城の過剰防御にはかないませんが…
現存建物は祈念櫓、南二の丸南隅櫓・多門櫓・北隅櫓、伝潮見櫓でいずれも内部の見学はできませんが、石垣だけでもその名城ぶりがうかがえます。中でも天守台周辺の石垣は小天守や続櫓の櫓台が一体化した複雑な形状で見応え抜群です。
今回は夕方の新幹線に乗る必要があり隅々まで見ることができませんでしたが、それでも満足できる登城でした。博多は新幹線を利用すれば簡単に行けるのもグッドです。
登城記
写真をクリックすると画像ファイルが表示できます。
1. 上之橋御門跡
上之橋御門は三の丸大手口で三の丸の北東に位置します。下之橋御門と同様に堀沿いの唐津街道に面しており博多方面最寄りの虎口です。左折れの内枡形門ですが、建物は一の門(内門)の渡櫓門のみで、二の門(外門)はありませんでした。徳川系巨大城郭のように一の門と二ノ門を備えた完成形枡形門ではなく、豊臣大坂城や熊本城などと同様の造りとなっており、織豊系城郭らしさがよく現れています。石垣は打込接で横目地の通らない乱積傾向です。隅角は算木積みとなっており隅石短辺と長辺の長さ比は1対2ほどです。
水堀と上之橋御門跡
上之橋御門跡
外側、正面から撮影。
上之橋御門跡
枡形から撮影。中央部分を遮って石垣上に渡櫓門が建てられていた。
上之橋御門跡
内側、裏面から撮影。
2. 三の丸・福岡城むかし探訪館
三の丸は東西1キロメートルほどもある広大な曲輪で家老クラスの重臣屋敷がありました。三の丸より内側に入る虎口は北東の上之橋、北西の下之橋、南西の追廻橋の三つのみで、城の規模に対して虎口の少なさを感じます。三の丸の北面には幅50〜70メートルの広大な水堀が残っています。昭和62年(1987)には平安時代に築かれた古代の迎賓館である「鴻臚館」の遺構が発見されています。福岡城のガイダンス施設である「福岡城むかし探訪館」があり、400分の1の福岡城復元模型が展示されており、日本100名城スタンプ設置されています。まずはこの模型をじっくり観察し、福岡城全体の縄張りとこれから進むルートの予習ができます。
三の丸
三の丸には古代の迎賓館・鴻臚館があった。左側の建物は鴻臚館跡展示館、右側の建物は福岡城むかし探訪館。
福岡城模型
東(現在の博多駅方面)から撮影。
福岡城模型
北(海側)から撮影。
福岡城模型
西から撮影。手前の広大な堀は大濠。
福岡城模型
南から撮影。南側の堀は現存していない。
福岡城模型
北側から本丸周辺を撮影。右手前の虎口は下之橋御門。
3. 東御門跡 〜 扇坂御門跡
東御門は二の丸大手口で二の丸の北東角に位置しています。枡形は設けない食違虎口で、渡櫓門を潜ると右手に直角に曲がる階段がありました。東御門の右手には二重の革櫓があり門前の攻め手に横矢を掛けることができました。東御門より内側は三の丸より一段高い二の丸で、これより内側が総石垣造りの福岡城主郭部となります。
扇坂御門は二の丸を二つに隔てる門で、扇坂御門の手前を東二の丸、奥を西二の丸とも呼んでいました。東二の丸には二の丸御殿がありました。扇坂御門を入ると目の前には扇形の石段があり、この門の由来となっています。扇型の石段は全国でも珍しく私は福岡城でしか見たことがありません。
東御門跡
正面通路上に下見板張の渡櫓門があり右側石垣上に革櫓があった。
革櫓跡の石垣
隅角は算木積みで隅石短辺と長辺の長さ比は1対2ほど。
東御門跡石垣
門前右側の石垣にはひときわ大きな鏡石がある。
二の丸北面石垣
東御門跡前から右側を見る。奥の張り出し上には萬櫓が建てられていた。
扇坂御門跡正面
本丸東面石垣
扇坂御門跡前から左側を見る。奥の張り出し上には祈念櫓が建てられていた。現在祈念櫓は石垣修復にともない解体され部材が保存されている。
扇坂御門跡
扇坂御門は平屋の城門だった。
扇坂
扇坂御門の由来となった扇形の階段。
4. 西二の丸 〜 本丸
扇坂御門の先は本丸の北側の一段下に位置する西二の丸で、かつては倉庫のような長屋があったようです。
本丸表御門は本丸大手口で本丸北面のほぼ中央に位置しています。枡形は設けない食違虎口で、渡櫓門を潜ると正面に階段があり、階段の先には本丸御殿がありました。本丸御門の渡櫓門は福岡市内の崇福寺の山門として移築現存しています。
本丸の北側三分の二ほどの土地には本丸御殿がありました。
西二の丸
本丸表御門跡
本丸表御門礎石
本丸から見た水の手
本丸
本丸の井戸
5. 天守台周辺
本丸の北側では東から小天守台、中天守台、天守台が直列に接続し本丸を区切っています。区切られた空間は天守、中天守、小天守、武具櫓、二重多門櫓、鉄砲櫓、水手御門に囲まれさながら連立式天守と天守曲輪のようになっていました。特に武具櫓、鉄砲櫓は三重櫓で、52万石の大藩にふさわしい威容を誇っていました。
また、天守台周辺の構造は複雑で、鉄門を潜り左に直角に折れ埋門の上を通り天守台穴蔵に入ります。天守台へ直接続く階段はないため、周囲を囲む櫓内の階段で昇り降りしていたものと思われます。
天守台は東西約25メートル、南北約22メートルの大きさで、石垣は非常に緩い勾配の打込接となっています。隅角は算木積みを志向していますが、三の丸や二の丸の石垣と比べると未完成域のものです。特に南東隅では強度的に推奨されない築石を縦に使用している箇所も見られます。これらのことから、福岡城ではすべての石垣を一斉に築いたのではなく、天守台周辺から徐々に石垣を築いていったものと推測できます。
これだけ立派な天守台周辺ですが、肝心の天守については幕府に遠慮して築かれなかったというのが定説でした。しかし近年、熊本藩の文書の中に天福岡城天守の存在を示唆する記述が発見され天守存在説が急浮上しています。個人的にはこれだけ立派な天守台を造っておいて天守を築かなかったとは思えません。増してや関ヶ原の戦いで大活躍した黒田長政の城、遠慮する理由はないと思うのですが…
小天守台
小天守台
天守台
北東から撮影。
天守台
南東から撮影。
鉄門跡
垂直でないものとしては日本有数の急勾配石垣。
天守台
北西から撮影。
埋門跡
天守台
南東から撮影。隅石を縦に使用している箇所がある。
穴蔵
穴蔵石垣
天守台から見た鉄門跡
天守台からの眺め
6. 本丸裏御門跡 〜 南二の丸
本丸の西面中央には本丸裏御門があり南二の丸方面へ続いています。
南二の丸は福岡城最南端に位置する曲輪で、かつては小天守に匹敵する規模の南三階櫓がありました。搦手である追廻橋の真正面に位置し、搦手を守る重要な曲輪であったことがうかがえます。
南二の丸の西面には福岡城に現存する数少ない建物である南二の丸北隅櫓、多門櫓、南隅櫓が残っています。北隅櫓と南隅櫓は二重櫓としては珍しい切妻造となっているのが特徴です。北隅櫓と南隅櫓をつなぐ多門櫓は三十間もの長さがあり日本屈指の長さです。あまりに規模が大きいためこれらの櫓を1枚の写真に収めるのが難しいほどです。
本丸裏御門跡から見た天守台
南二の丸北隅櫓
南二の丸南隅櫓
南二の丸多門櫓
7. 母里太兵衛屋敷長屋門
本丸裏御門跡から桐ノ木坂御門跡を経て三の丸に至り、道路沿いに下之橋御門方面へ進むと左側に長屋門があります。これは現在の天神二丁目にあった母里太兵衛屋敷のもので、昭和40年(1965)に移築されたもので、江戸時代の武家屋敷の長屋門の形態を良好にとどめています。母里太兵衛は黒田家の重臣で、福島正則との呑み比べで名槍日本号を譲り受けた逸話は黒田節として有名です。
母里太兵衛屋敷長屋門
母里太兵衛屋敷長屋門
8. 下之橋御門
下之橋御門は三の丸の北西に位置し、上之橋御門と同様に堀沿いの唐津街道に面しています。構造も上之橋御門と同じ左折れの内枡形門で、建物は一の門(内門)の渡櫓門のみで、二の門(外門)はありませんでした。
渡櫓門は改修により上部構造を欠いた一重の門となっていました。この門も平成12年(2000)の不審火により焼失しましたが、その後もとの二重の門として復元されました。この下之橋御門も渡櫓門としては珍しい切妻造となっており、福岡城の建物には切妻造のものが多かったことがうかがえます。写真ではわかりづらいですが、間口に対して背の高い門でなかなかの迫力があります。
枡形正面には二重櫓がありますが、これは伝潮見櫓で、大正時代に市内の黒田家別邸に移築されていたものを昭和31年(1956)に移築したものです。伝潮見櫓とされてきましたが、古写真などと称号したところ本丸裏御門の近くにあった時打櫓であったことが判明しています。
下之橋御門
外側から渡櫓門と伝潮見櫓を撮影。
下之橋御門渡櫓門
外側、正面から撮影。
下之橋御門
内側から伝潮見櫓と渡櫓門を撮影。
堀越に見た下之橋御門
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