小田原城天守耐震改修工事見学会

2015年7月から2016年4月まで、小田原城天守は建築後初めての大規模改修工事を行っています。主な目的は築55年がたち老朽化が進む鉄筋コンクリート製天守の耐震補強です。
当所は予算3億円ほどで柱の補強など小規模な改修となる予定でしたが、専門家の検査によりそれでは耐震性に問題ありとなったため、耐震壁を設けるなど大規模な改修工事となりました。耐震壁を設けることで内部の構造が大きく変わるため、展示等も大幅リニューアルすることになりました。私としても昭和の香りたっぷりだった展示がリニューアルするのは嬉しい限りです。
最終的な予算は9億7000万円となりましたが、うち3億円はこれまで入場料で貯めたお金、残りは借り入れ金でまかない、税金は使用しないとのこと。小田原城天守が独立採算でやっていることを初めて知りました。

さて、2016年3月6日(日)、小田原市民を対象に佳境に入った小田原城天守耐震改修工事見学会に行ってきました。定員50名のところ130名の応募があったとのことで、なかなか盛況な様子。工事中の貴重な様子を見ることが出来ました。

  • 外観
    外壁はヒビ等が数多く合ったため、全面的に塗り直しをしました。漆喰をベースとしてはいますが現代塗料も使用しているとのこと。また大棟の上に2本突き出ていた避雷針は見栄えを良くするために撤去、かわりに鯱に小さな避雷針を設置したそうです。

    外観その一
    外観その一
    取り外された避雷針
    取り外された避雷針
    外観その二
    外観その二

    塗り替え前後の壁
    塗り替え前後の壁
  • 内部
    内部は多くの場所に耐震壁を設置したため、今までよりだいぶ狭く感じます。天井に空調を設置したため天井も低くなっています。1階には窓がなく通路の両脇に設置されたパネルを見ながら進むような感じでしょうか。1階は江戸時代がテーマになります。これまで5階にあった売店は1階に移動します。

    1階
    1階

    2階は窓が開かれていますが、やはり耐震壁を設けたためこれまでより狭く感じます。2階は北条氏時代がテーマになります。1階と2階にはそれぞれミュージアムシアターが設けられ、いかにも今風な博物館といった感じです。しかしあの小田原城が随分とおしゃれになったものです。

    2階その一
    2階その一
    2階その二
    2階その二
    2階その三
    2階その三

    3階、4階は展示スペース的にはこれまでとほぼ変わらず、工芸品などを展示します。

    3階吹き抜け
    3階吹き抜け
    4階から3階を見る
    4階から3階を見る

    5階は今回リニューアルの目玉である摩利支天空間の木造再現がメインとなります。小田原城天守復興の際、参考とされなかった東博模型で確認された摩利支天と天守七尊を祀る空間(詳しくはこちら)を「オール小田原」をコンセプトに木造再現しています。木材は辻村山林(小田原の人ならわかるかな…)の樹齢300年、200年といった木材を使用しています。あの山にこんな立派な木があるとは知りませんでした。そして宮大工の芹澤棟梁は銅門の復元を手がけた方です。「摩利支天様がこらからも末永く小田原を守ってくれることを願い造らせて頂いた」との棟梁の言葉が印象的でした。

    階段から5階を見る
    階段から5階を見る
    5階摩利支天空間
    5階摩利支天空間

    摩利支天について
    摩利支天について
  • 最後に
    築55年がたちだいぶくたびれた感じの小田原城天守でしたが、今回のリニューアルにより大きく生まれ変わりそうです。
    昭和30年代に造られたコンクリート製天守の多くは、市民の寄付が大きな財源となり建築されているものも多く、小田原城もそのひとつです。当時の人々の城と郷土に対する愛着の現れがこのコンクリート製天守といえるのではないでしょうか。こういった人々の思いも含め、コンクリート製天守もそう悪いものではないと私は思います。
    今回のリニューアルで小田原城に来た人々の満足度がアップし、小田原城の経営も上向くことを期待しています。リニュアールオープンは5月1日の予定です。

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