お城EXPO2018 厳選プログラムレポートその二

お城EXPO2018厳選プログラムのご紹介、その二です。

12月24日(月)15:30~16:30
「名古屋城の御殿・天守復元の秘密」

登壇者:
三浦正幸先生

現在の名古屋城天守の問題点は以下の通り。

・鉄筋コンクリート耐用年数問題
現在の天守は1959年(昭和34年)築の鉄骨鉄筋コンクリート構造。建築当時コンクリートは人工の石という認識で、半永久的に持つものと考えられていた。
しかしその後鉄筋コンクリートは劣化するものであり、耐用年数は50年から80年ということがわかった。(なお、古代ローマのコンクリート建築には鉄筋が一切入っていないため今も健在)
名古屋城天守は築60年ほどがたち老朽化が著しい。
また、日本各地の鉄筋コンクリート製天守はこのころ造られたものが多い。今後これらをどうしていくかが大きな課題となる。

・耐震強度問題
最近の耐震診断では名古屋城天守の耐震強度(Is値)は0.1程度と診断された。2016年の熊本地震で大破した熊本城天守はIs値は0.3程度であった。
仮に南海トラフ地震が発生した場合、現在の名古屋城天守は確実に大破ないし倒壊する。そのため現在名古屋城天守には入場できないよう措置がとられている。

・石垣への荷重問題
現在の名古屋城天守は石垣に荷重をかけないようケーソン(杭)を打ち込みその上に建てられており、天守台には一切乗っていない。しかし、石垣にはある程度の荷重がかかっていないと地震発生時に崩れてしまう。
熊本地震では石垣に荷重をかけないよう復元されていた櫓の櫓台石垣が崩れている。飯田丸五階櫓など端の石垣が崩れなかった櫓もあるが、これは端部分のみ櫓と接し荷重がかかっていたためである。

ではなぜ「木造」での復元を行うのか。

建物の強度自体は鉄筋コンクリート製のほうが木造の何倍も強い。しかし地震で建物を壊そうとする力は建物の重さに比例しており、鉄筋コンクリート製は木造の4倍から5倍の重さがある。
→地震に対して弱い。
また、石垣への荷重問題についても石垣に適切な加重をかけることで解決できる。
→そもそも木造天守が乗っていたのだから問題ない。現に濃尾地震で名古屋城天守は無事だった。

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御殿の秘密

御殿全体が木造復元されており、非常に意味のある復元。

徳川家康時代の御殿建築を忠実に再現。
二条城二の丸御殿は徳川家康以来のものだが、改築が繰り返されており創建当時の姿ではない。

二条城は長押の上に障壁画がある。←徳川家光時代以降の様式
名古屋城は長押の上は白壁のまま。←徳川家康時代の様式

御殿としての様々な部屋も忠実に復元している。
例:
・家光用の食事を置くための「上座部屋」がある。
・蒸し風呂としての湯殿がある。鎌倉時代以降蒸し風呂が標準。湯船につかるのは新式。
・複数の部屋を接続したL字状の広間がある。欄間で区切られた部屋はそれらの部屋をまとめて使用することを意味している。また、欄間に細かい彫刻がないものについては、上段の折り上げ天井を下段から見えるようにするためである。

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